1.倉橋瑞穂と狩屋良臣の場合
 



(瑞穂、良臣の部屋に駆け込んでくる)
「ちょっと!狩屋、見てよこれ!!」
「なんだよ突然。ノックもしない、相手の許可も得ないで部屋に入る、どんだけ非常識なんだよ」
「今はそんなのどうでもいい!それより見てよ、これ!」
(良臣、瑞穂に強引に紙を渡される)



「は?狩屋良臣のとある1ヶ月?なんだこれ」
「ちょっと前に脳内メーカー流行ったでしょ。そのシリーズにカレンダーメーカーってのがあるの。友達に教えてもらって今やってみたんだけど、ちょっとこれ有り得なくない?」
「有り得ないのは俺の名前入れてるお前だって」
「そうじゃなくて、カレンダーの中身のことなの!!」
「中身?努力で埋め尽くされてるな」
「そう、それ。面白い結果を求めてやってみたのに、全くもって笑えないじゃない。なによ、この真面目一色のカレンダー。31日中29日は努力で月に2回だけ遊んでるとか」
「そうだな、俺は毎日努力の人間だからな」
「努力は努力でも狩屋の場合は全部勉強に置き換えて欲しいわ。あー、なんかむかつく。全然面白くない」
「遊びの割には的確だよな。ただ、遊びが木曜にあるのは意味不明だな。俺、平日は毎日塾あるし。遊ぶなら土日にしろよ」
「現実的なつっこみもむかつく」
「誰がそう簡単にお前の楽しみになってやるかよ。つか、お前はどうだったの」
「へ?」
「だからお前のだよ。自分の名前も当然入れてみたんだろ」
「え、あー、あんま面白くなかったよ。うん」
「……へえ」
(良臣、パソコンを使い始める)
「え、ちょっと、狩屋何してんの!?」
「お前が俺ので勝手に遊ぼうとしてたのに、俺がお前のを見ようとして何が悪いんだよ」
「いや、だからつまらないからやめた方がいいって。政治家の名前でも覚えた方がよっぽど狩屋の為になるんじゃないかな」
(瑞穂、良臣の腕を引っ張って止めようとする。しかし良臣、びくともしない)
「お、出た」
「ああっ!」
「って、これ……」



「おい、俺のより全然楽しいじゃねーか」
「いや、そんなことないよ。狩屋のがつまらなすぎただけだよ」
「平日は全部空想?ふざけてんのか。でも土日がやけに忙しいな」
「知らないよ、そんなん」
「しょっぱな給料日で、次の日から5日間も空想したくせに土曜日は逃避行?なめてるだろ。それ以上どこに逃げようっていうんだよ」
「次の日が歯医者だったから逃げたくなったんじゃないの?」
「日曜日に歯医者ってのがおかしいけどな。んでもって次の土日は危険日とパーティ?更に次の土曜が駆け落ちとか、色々想像できすぎて怖いな」
「パーティで出会った人がしつこかったから、前から付き合ってた人と逃げたのかもしれないよ。出会ってすぐの人と駆け落ちする意味がわからないもん」
「前から付き合ってた?例えば?」
「……歯医者とか?」
「……うわー。でも駆け落ちの翌日が休みってのはなんかリアルじゃないか?その週の土曜が家ってのも駆け落ちで相当疲れた感がある気がする」
「多分これ、駆け落ち失敗してると思うんだけど。じゃないと28日に家にいるっておかしくない?」
「そうでもないぞ。ほら、駆け落ち報告で家に行ったのかもしれないし」
「家って実家って意味?それじゃあ家で休んでるんじゃないじゃん」
「そういうことになるな。でも次の日は英会話だぞ。良かったな。多趣味で」
「よくない。って言うかこれ、別に私のことじゃないから」
「いや、わからないぞ。俺のは結構合ってたからな。10年後くらいのお前の姿かもしれないぞ」
「やーめーてー!!」


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